お知らせNews

沖縄の本土復帰50年に関する国会での決議について(2022年4月28日)

2022年5月15日、沖縄は日本復帰50年の節目を迎えます。 これに伴い、国会で2つの決議が可決されました。

一つは4/27、参院ODA・沖縄北方特別委員会にて可決された「沖縄の本土復帰50年および沖縄を取り巻く諸課題の解決促進に関する決議」です。
*(5/5現在、全文はまだ参議院HPにはあがっていません。参考までにこの文章の最後に掲載)。
*本会議での採決は5月中と報じられています。

もう一つは4/28、衆議院本会議にて可決された「強い沖縄経済と平和創造の拠点としての沖縄をつくる本土復帰五十周年に関する決議案」です。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/topics/ketugi220428-1.html(第二〇八回国会、決議第四号)

両決議とも沖縄に関わることであり、これらの内容については、党国会議員を通じて情報提供があり、4月中に県連からも意見や文案提案のやりとりを続けていました。国会での立憲民主党は、県連の意見も聞き取りふまえた上で与野党間の文言調整を行ったものと受け止めています。

それでも残念ながら県連からの要望がすべて反映された決議内容とはなりませんでした。特に米軍基地問題では野党提案を自民党内でまとめるに至らなかったようで、調整のたびに徐々に文言が削除されていく様子がうかがえました。途中から「衆参で違う決議文となるようだ」「委員会と本会議で内容が異なる(??なんだそりゃ…)」など、国会の与野党のせめぎ合いの結果として出たのが2つの決議案です。

衆議院の決議は720字程度、参議院のODA・沖縄北方特別委での決議は1200字程度と字数だけみても違います。内容は全体的に、衆議院は「沖縄振興策」重視、参議院(ODA/沖北委)は「基地問題、沖縄の課題解決への姿勢」を重視した内容です。

間接的に文案に関わることができた一人として、口頭・メールで調整を担当した国会議員に要望した主な内容を記します。

(1) 4月に当初(自民党)案を読んでの意見。

  • 全体的に、沖縄が日本復帰を望んだ大前提である「米軍基地負担の軽減」、県民の人権や生活よりも米軍が優先されることがない「日本国憲法の下での平等」への意識が薄れていると言わざるを得ません。
  • 決議に地位協定改定を加える他、(略)「未だに広大な米軍基地に占拠され、基地から派生する爆音や部品落下、環境汚染、米兵による事件、事故など、県民の安心して暮らす権利は侵害されている。」を追加するよう要望します。

(2)意見の背景

  • 本来であれば、米ソ冷戦が終結した後に米軍基地削減という形で「平和の配当」が沖縄で実現されるべきでした。日本の政治はそれもしない/できないまま、「テロとの戦い」「中国への脅威」と、国際環境がどう変化しようと沖縄の基地機能強化を容認している現状があります。
  • 先だって地位協定のヒアリングを受けた党WTは党「外交・安保・主権調査会」に属しています。日本復帰前の沖縄に日本が持っていたとされる「潜在主権」は、本当に日本にも戻っているのでしょうか。当時の施政権の返還は、本当に日本の主権が沖縄にも適用される内容だったのか。それを問うたのが、10年前の「主権回復の日」に抗議し、沖縄で「屈辱の日」大会を開いた主旨でした。
    改めて、沖縄の米軍基地負担が削減できていない現状と、日本国内の米軍基地のあり方がこれでいいのか、という問題意識と、解決への決意を、決議の中に反映させていただきたいです。

[ 「復帰50年式典に向けての国会議連」設立趣意書案について ]

なお、順番としては前後しますが、沖縄の復帰50年式典に向けた国会での取り組みとして、自民党から野党側に「復帰50年式典に向けた議員連盟をつくりたい。そのための趣意書案に賛同してほしい」との打診があったとのことで、当初は決議案より先に、趣意書案への意見・要望を出していました。下記の県連要望は当初の趣意書案について回答したもので複数回、やりとりした主な内容です。

復帰50年の議連設立の趣意書案」について指摘・要望した点。国会与野党のやりとり状況を教えていただきながら、県連では幹事長・県議団・政調で意見集約しました。
  • 趣意書案は日米関係の信頼・友好関係を強調しているが、それにも関わらず沖縄の米軍基地負担軽減や日米地位協定改定が未だ実現できないことへの認識がない。
  • 冷戦崩壊後、「テロとの戦い」「中国の脅威」など国際環境が変わっても沖縄の基地負担が減らず、むしろ負担増とも言える現状認識を文言調整する中で投げかけてほしい。
  • 沖縄選挙区選出の野党国会議員が全員、賛同できる内容にしてほしい。
  • 「2022県連大会宣言」「2013屈辱の日県民大会宣言」を踏まえてほしい、と2つの文書を提供。
  • 「祖国復帰」の“祖国”はとる。復帰運動当時は「祖国復帰」スローガンだったと理解しているが、50年たった沖縄の現在の状況からは、日本を「祖国」と言い切ることへの疑問など幅がある議論も出ている。
  • 日本全国で沖縄の課題を共有するため「小指の痛みは全身の痛み(元参議:喜屋武真栄氏)」の言葉はわかりやすいのではないか。
  • (立憲案にあった)「日本復帰の主役は沖縄県民」はよいと思う。これに加えて沖縄の日本復帰を、国会議員がどう受け止め評価するかの視点も重要ではないか。

以上

参考

  • 「沖縄の本土復帰50年および沖縄を取り巻く諸課題の解決促進に関する決議」
    (2022年4月27日 参議院、政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会にて。勝部賢志(立憲民主・社民)委員より、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、国民民主党・新緑風会、日本維新の会、沖縄の風、碧水会などの共同提案)

    本委員会は、本年5月の沖縄の本土復帰50年の節目に当たり、沖縄を取り巻く諸課題に関する対策の樹立を使命とする特別委員会として、ここに改めて、それら諸課題の解決に向けて最大限の努力を払う決意を表明する。
    昭和47年5月の沖縄の本土復帰以来、沖縄振興特別措置法などに基づく5次に渡る振興策の実施と、沖縄県民の不断の努力とによって、特に、社会資本整備の面で本土との格差是正が図られるとともに、観光リゾートや情報通信関連分野における産業の振興等、沖縄の経済社会は総体として発展してきた。
    しかしながら、沖縄戦とその後27年間の米軍の占領統治下において本土から多くの基地の移転などが行われた結果、国土面積0.6%の沖縄に、今なお米軍専用施設面積の70.3%が集中しており、近年の厳しい安全保障環境を背景とする訓練の増加等もあいまって、本土復帰から50年となる現在においても、県民の安全な暮らしや生活が脅かされている。また、地域経済の十全な発展の阻害要因にもなっている。政府においては、引き続き、沖縄における米軍施設・区域の整理縮小および早期返還の実現に努め、沖縄の過重な基地負担の軽減に全力を尽くすことを求める。
    あわせて、政府は、事件・事故、環境問題など米軍基地から派生する諸課題の解決のため、沖縄県等の要望を踏まえ、日米地位協定の実情を注視し、あるべき姿を不断に追求していくべきである。特に、現下の新型コロナウイルス感染症等の指定感染症・検疫感染症による地域経済・社会活動への影響を最小限にとどめるため、在日米軍における感染拡大防止措置の徹底などに取り組むことを求める。
    また、依然として、沖縄の一人当たり県民所得や法定最低賃金は全国最低水準となっており、子どもの貧困や公共交通基盤としての鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入に向けた調査・検討、離党の定住条件の整備など、解決すべき課題が残されている。政府においては、振興策を推進するに当たり、沖縄の自立的発展と県民の生活向上に資するよう、県民の声に寄り添って、地元の意思を十分尊重することを求める。
    沖縄の地理的特性は、長らく特殊事情として克服すべき条件不利性とされてきた。しかし、成長著しい東アジアの中心に位置するという優位性は、沖縄の潜在力を最大限に引き出す可能性を秘めている。沖縄が、文化、教育、経済、外交等のさまざまな分野における多元的交流の推進や世界に広がるウチナーンチュのネットワークを基軸とした人的基盤を通じて、21世紀の「万国津梁」を形成し、平和の島・沖縄の自立的発展のみならず、わが国ひいてはアジア・太平洋地域の持続的発展、信頼醸成にも貢献するよう、政府においては最大限の努力をもって、その実現に努めるべきである。
    本委員会は、これら沖縄を取り巻く諸課題に真摯に向き合い、これからの10年で、その解決に向けてさらなる努力を尽くすことを誓うものである。
    右決議する。
  • 沖縄タイムス 『消えた「地位協定」 復帰50年の国会決議は苦渋の着地点 衆院の沖縄特別委 「骨抜きだ」県内に落胆も』2022.04.23
    https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/946990
  • 琉球新報 『復帰50年決議、「地位協定の見直し」はなぜ消えたのか ハードルの高さ浮き彫りに 衆院沖北委』2022.04.22
    https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1505987.html
  • 朝日新聞『沖縄復帰50年、超党派議連が発足「米軍施設返還で成果あげたい」』2022.04.27
    https://www.asahi.com/articles/ASQ4W6RCTQ4WUTFK01Y.html