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ヘイトスピーチ規制条例について

ヘイトスピーチ規制条例について
(令和4年 第7回定例会、文教厚生委員会、2022年12月26日)


人種、民族、出身国、宗教などを理由にヘイトスピーチ(憎悪表現)が問題になっています。日本ではヘイトスピーチ解消法が平成28年より施行されたにも関わらず、特定の民族や国籍の人々への差別的言動が続いている現状があります。
沖縄でも那覇市内を中心に同類の活動が見られ、県民から「沖縄県でもヘイトスピーチ規制条例をつくってほしい」との働きかけを受けて、質疑で取り上げてきました。



(きゆな智子)ヘイトスピーチに規制条例について、お尋ねをさせてください。
 ここでは、まずこの条例ができるまでの経緯を改めて確認したい。条例ができるまでには大きく2つのパターンがあると思っています。国の法律や制度ができたからつくるという機関委任事務のような委任型の条例と、あとは地域の実情に応じて地方自治として行う自主的な条例―今回の条例はどちらのほうに当たるんでしょうか。

(女性力・平和推進課長)
 ヘイトスピーチ解消法が平成28年に施行され、県内においては、平成26年にこのヘイトスピーチなるものが那覇市役所前で街宣が行われていた。そこを市民団体の方が止めて、今現在に至っているという状況があります。その中で我々県としまして検討委員会を設けて、条例の策定に向けて議論を進めてまいりました。

(きゆな智子) 法律ができてから、ヘイトスピーチが可視化されたり―可視化はずっとされているから法律ができていると思っていますけれども―沖縄においてはこの委員会にも陳情が多く出ているように、県民からの要望、議論で非常に社会喚起をされているという実態は皆さんも御認識のことかと思います。
 今回骨子案が出て今パブリックコメント中ですが、県の条例でここはもうちょっと踏み込んでほしいという意見が様々出てきています。こういった意見について、主にどの点を指摘されていると県で認識されていますか。

(島津典子女性力・平和推進課長) 12月5日からパブリックコメントで県民意見募集を1月6日まで今開始をしているところです。今まで、川崎市条例のような罰則を設けてほしいという声や、いわゆる沖縄ヘイトという問題に関してどう条例でできるかというような御意見が広く寄せられているというふうに認識しております。

(きゆな智子) この条例(案)がもとにしているのがヘイトスピーチ解消法で、本邦外出身者を対象にしていると。ここに沖縄ヘイトと言われるものが含まれていないということ―この議論で専門家の中ではどのような意見がありましたか。

(女性力・平和推進課長) 過去この2年間にわたるこの有識者の会議の中では、出身を理由とした差別とすると幅が広く、これを差別的言動として禁止し、制裁を科すものは難しいのではないかという御意見や、不当な差別的取扱いをしてはならないという条文を設けながら、沖縄の人に対する差別的言動に関してどう対応するか、またいわゆる沖縄ヘイトと呼ばれているものの定義が非常に曖昧なものもありますので、そこを規制するなり、そういう表現についてどのようにしていくか。特に表現の自由を制限するものについては、不明確で過度に広範な規制とならないように注意しなければならないというご意見もいただいているところです。

(きゆな智子) 沖縄ヘイトについては私は国の法律よりも過度な規制をかけるという理解はしていないんですね。県の条例骨子案でも罰則規定までは踏み込んでいません。審議会を設けて、そこで氏名公表なり、ステップを踏んでいきますという内容になっているので、この過度の規制を厳しくするというのは罰則規定のことを言っているのではないかと考えています。
沖縄ヘイトについては、罰則規定に踏み込むか踏み込まないかにもよりますけれども、少なくとも今の骨子案の中では(ヘイトスピーチの対象の定義で)範囲を広げると、条例の横出しと言われる部分になるんじゃないかなと思いますが、それでも規制が厳しくなると、県のほうでは判断しているんですか。

(女性力・平和推進課長) 骨子案におきましては、これまでヘイトスピーチ解消法に基づくものとしておりましたけれども、幅広く包括的な今人権尊重条例としておりまして、近年問題となっておりますインターネット上の誹謗中傷等に対応するための章も独立して設けているところです。
 この県民からの申出による言動が当たるか、ヘイトスピーチに該当するかどうかというものは審議会に諮って、しっかりその内容が拡散をして、人の心を傷つけるような不当な言動が世の中に広まらないためにもしっかりそこは県民に対して周知をしていきたい、抑制していきたいというようなことを考えております。

(きゆな智子)県が出している冊子―これは人権を守るために取り組む17のことといって、おそらく国の法律に基づいて17カテゴリーをつくったんじゃないかと思っています。今、これは国予算で作っていますけれども、今後条例が制定されたときには、県が独自に予算を出して、例えばこの中に「沖縄ヘイトもやめましょう」と入れることは可能ではないか。そういった啓発で県のほうから呼びかけていくということまでやってほしいと想定すると、やはりヘイトスピーチの定義対象は広げてもらいたいですが、いかがでしょうか。

(女性力・平和推進課長) 委員のお示ししている国の―これは強調事項ということで17を挙げられているものを県が受託をして作成したリーフレットとなっております。条例ができた暁にはこの条例の持つ意味を含めて、広く県民に理解をしていただきたいと思っておりますので、この条例に関することを普及啓発ということでリーフレットを作成したり、シンポジウムを開催したりなどの経費は今考えているところです。

(きゆな智子)改めて確認したいんですけれども、本邦外出身者というものを県は今どういうふうに定義していますか。

(女性力・平和推進課長)
 本邦の域外にある国もしくは地域の出身者である者またはその子孫であって居住または滞在する者として今骨子案で定義をしているところです。

(きゆな智子)やはり本邦外、域外というところが、今、県が自主的に線引きをしてしまっていることに私は限界があると思います。
一つ御紹介をしたい。外国人人権法連絡会がほぼ毎年、日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書という冊子を出しています。これは主にヘイトスピーチも含めて、日本に関わる外国人―主に居住する外国人といった方たちの権利の状況が日本でどう保障されているのか、どういう厳しい状況にあるのかを調査している報告書です。
 外国人の人権を調査している報告書なんですけれども、沖縄のことも載っているんです。ヘイトスピーチの文脈で。ですので、本邦外出身者という国の法律の定義をそのまま持ってくるだけのような委任条例を超えて、県の地方自治の自主条例として、沖縄のことはもっと踏み込んで触れてもらいたいと思っています。
 一つ御紹介します。この報告書の2022年版の11ページを読み上げます。沖縄と在日コリアンを攻撃する番組、省略しまして問題になっていた放送番組に関係する方の発言、こう載っています。「問題なのは日本人として帰化しているのに日本の悪口ばっかり言っていたり、徒党を組んで在日集団をつくろうとしている輩です。いわゆるえせ日本人、なんちゃって日本人です。」これ本当にヘイトスピーチだと思うんですけれども、これが沖縄と在日コリアンを攻撃する番組の一例として報告がなされています。
 
 沖縄の歴史を振り返るとやはり1972年に復帰をしてほかの日本とは違う歴史というものを持っていて、その前から沖縄県民は沖縄の中でも、そして沖縄の外でも様々な差別に向き合って乗り越えてきた歴史があるわけです。その復帰というプロセスを踏んだがゆえに、日本国民としての復帰と日本人になりましたという、民族とか人種とか社会的なグループという議論が錯綜しているのではないかと、ヘイトスピーチの議論を聞いていると感じます。
 日本に復帰したからもう日本人として帰化しているのにという文章を紹介しましたけれども、いま「沖縄ヘイト」と言われるものは「日本に復帰したのに日本の批判をしやがって」というような文脈で発出してはいないだろうかと思うわけです。その中で県の条例がそこに踏み込まず、本邦外出身者というところでとどまってしまっていては、やはり先ほど来申し上げている地方自治としての自主条例、この姿からは距離ができてしまうんではないかと考えています。私の考えを申し上げましたが、いかがでしょうか。

(女性力・平和推進課長)沖縄県民のみならず、もう全ての人に対する差別は許されるものではないと考えております。いわゆるこの沖縄ヘイトと呼ばれている言動を見聞きすることによって、その県民に対する差別意識が生じたり、誤った認識を持つおそれがあると考えていることから、県としてはこういった情報をうのみにすることなく、沖縄県に対する誤った認識に基づくものであるということをしっかり情報発信していくことが大事だと思っております。この情報を正しく見極めて、正しく行動できる能力をやはり一人一人が高めて、心ない誹謗中傷やこの差別的な投稿の被害者や加害者とならないようなインターネットであるとかその適切な利用についての普及啓発も必要であろうと考えているところです。

(きゆな智子)今日は指摘をして、あとはパブリックコメントがどういう形で集まるのか、それに対しての県の見解も見ないと議論が進まないかなと思いますが、骨子案を見て非常に気になっている点、いま一度、指摘をしておきたいと発言をいたしました。
 私の質疑は以上です。


議事録 → https://www2.pref.okinawa.jp/oki/bunkyoukousei.nsf
※HPへの掲載にあたり、読みやすいよう一部編集しています。

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