公立学校での琉球・沖縄史教育の推進について
令和5年第1回定例会(2月定例会) 文教厚生委員会
令和5年3月23日(木)
沖縄に生まれ育っても、学校教育で琉球・沖縄史を学ぶ時間はかなり限られています。
沖縄県では11/1を「琉球歴史文化の日」と条例制定しました。琉球・沖縄の歴史は、日本の一郷土史にとどまらず、東アジア・東南アジア、南米、米国など各国との関係において、広がりと深みを持ちます。
一方で、学校教員の業務負担や専門性を考えると、外部の専門家と協力して推進するほうが適切です。公立学校での授業の充実強化を求める陳情について質疑しました。
(喜友名 智子) 「琉球・沖縄史教育」に関する陳情、新規の26号について。答弁の中で「指導方法の研究改善」というお答えがありました。具体的に教えてください。
(県立学校教育課長) 具体的に行っているのは教科研修会、教育課程研修会、この場で主体的で対話的で深い学びの実現に向けた授業の改善、これに取り組んでいるところです。実際にはセンターの研究主事、それと本課の指導主事、それと文化財課の指導主事を交えて、いわゆる一つのテーマについて授業案をつくり、それを模擬授業という形で実施しました。
それを地域担当職員に見ていただいて、授業研究会を行い、それを各学校で今度は実践してもらうと。その実践例をまた収集をして、各学校に広めていくという形で今計画を立てているところです。
(喜友名 智子) この陳情の中で、特に記事項を見ると、日本と世界の近代史を関連付けながら学ぶ歴史総合というところに注目をしています。従来から日本の歴史教育というのは近現代史が弱いということは多くの方が指摘をされています。
沖縄、それから琉球史を取り上げるに当たっては、さらにそういった状況が予想されるわけですけれども、主体的に学ぶ前の基礎知識のインプットの分量は間に合っているという認識なんでしょうか。要はそもそも基礎知識もない中で主体性も何もないんじゃないかと思って聞いています。
(県立学校教育課長) 基礎知識という面につきましては、小学校、中学校における沖縄の歴史学習、小学校では基本的に地域を中心とした学びをしていきます。中学校では琉球王国の成立、それから琉球の国際的な役割、琉球の文化、琉球処分、沖縄の設置、沖縄戦、戦後の沖縄、沖縄の日本復帰、復帰後の沖縄という形で学ぶこととなっております。
その基礎の上に、今度は高校ではさらに深めた学びをすると考えておりまして、その中で発表、あるいは討論、そういったものを授業の中に取り入れて、琉球・沖縄の歴史を多面的に考察する力。これを生徒自身にも役割について考えさせる、そういう歴史教育に取り組んでいきたいというふうに考えているところです。
(喜友名智子) 小学校、中学校でこういった授業時間は年間で何時間ぐらい取っていますか。
(県立学校教育課長) 先ほどの補足で、この歴史総合は新課程で今年度からスタートした内容で、これまでは日本史であったり、学校設定科目であったり、選択で学ぶことになっていました。今回からはこれが全部の高校生が学ぶこととなっております。その中で先ほど言った内容の授業を展開したいというふうに考えているところです。
(喜友名 智子) 小中学校での授業に戻ると、(琉球・沖縄の歴史授業を行う学校があるとしたら)総合学習の時間で取り上げているのが最大限確保できる時間なんだろうなと思っています。
小中学校を卒業し、高校の歴史総合になると、今おっしゃったように新しい仕組みなので、歴史総合で必修、選択科目で日本史と世界史というものが選べますと。その中で琉球・沖縄史というものをどう位置づけて教えるんですかというのがこの陳情の趣旨だと思っています。
まだ始まったばかりの歴史科目の新しい学習指導要領の下では不十分ではないか、もしくは今からやろうとしているかもしれないときにしっかりと体系立てて、琉球・沖縄史を指導するための学習会や推進委員会をつくってくれというのがこの陳情の中身です。
まだ始まったばかりの新課程で、今行うには非常にいいタイミングではないかと思います。この陳情の求めている体系立てた琉球・沖縄史の指導のための委員会の設置は次年度以降、やろうと思えば可能なんでしょうか。
(県立学校教育課長) 委員会の設置については、今委員会を設置して教材を作るなどの方向ではなく、まずは指導シートを中心とした授業づくりのほうをまずスタートさせていきたいというふうに考えています。各学校の取組、場合によっては地域の実態を考慮して、学校と現場との意見交換を踏まえて、検討していきたいというふうに考えているところです。
(喜友名 智子) 2012年、今から10年ほど前に同じ趣旨の陳情、琉球・沖縄史を必修科目、または必修に準ずる科目として設置することを求める陳情が採択されているとお聞きしました。それにもかかわらず、昨年本土復帰50年の年に復帰の日を知っている高校生が半数にも至らない。小中学校の21%では沖縄戦に至る学びが不十分であるというアンケートも出ている。
10年前に採択された陳情があっても、子供たちの学びになっていないという状況があって、この陳情が出されていると思います。ぜひ今の延長ではなくて、新しい歴史教育への取組を行うためにもこの陳情の趣旨、ぜひ御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
(県立学校教育課長) この委員会等の立ち上げにつきましては、教科研修、あるいは研究授業、これらにおいてしっかり我々としても指導助言を行って、主体的、対話的で深い学びの実現に向けて授業改善に現在努めているところですが、引き続き努めていきたいと考えています。
その中で授業実習の好事例を、それをしっかり収集して教科研究会での取組で、これをしっかり学校に提供することで授業づくりを支援していきたいと考えています。それから実際に関係機関と連携をして、歴史総合における、この琉球・沖縄の歴史に関する、活用できる資料と、どういったものがあるかというのを研究していきたいというふうに考えているところです。以上になります。
(喜友名 智子) 「琉球の歴史」はどちらかというと、今、文化観光スポーツ部が引っ張っていると思っていますが、観光客のための、消費のための歴史ではないと思っています。教育に根付いてこそ、歴史を大事にしているといえると思いますので、ぜひこちらの陳情のほうをお酌み取りいただければと思います。